遠い記憶の底に沈んでいたポエム?エッセイ?童話?短編?……

ずいぶん前から書きためていた文(もの)です。取るに足らない書き物ばかりですが、パソコンを開いていたら100編ほどの文がありました。少しづつ整理して投稿していきたいと思っています。

『初恋一考』初恋は甘くもあり、そしてほろ苦くもあり


 

                 

         ページを開いてくれてありがとうございます
 

                
 

                             誰もが一度は通過する小さな恋
              
                           『初恋』           


                          それは甘くもあり、そしてほろ苦くもあり


 
『初恋一考』
 
言葉にするにも面映(おもはゆ)いふたつの文字。


『初恋』


青春の息吹などはるか昔日に終息し、


恋いなどというたわいもない幻惑に惑わされることなどなく、


ただ安穏と暮らす今日この頃。


所在なく手元の辞書を引き寄せ、パラパラとページをめくった。


あてもなく、ただ漫然と辞書をめくるその指の先がふっと止まった。


細めた目の先に初恋のふたつの文字が小さく浮んでいた。


覚束ない目許で、ふたつの文字を眺める口許がニコッとほころんだ。


が、笑みとは裏腹に胸の奥がなぜかチクンと疼いた。


『初恋』


「それは、始めての恋」


「初めて、異性に気持ちを起こすこと」


何冊かの辞書をめくり、初恋の文を指の先でなぞってみたが、


どれも大差なく簡単に、そして明瞭に表記されていた。


続いて名言語録集のページを探った。


その目の先に、うろ覚えのある言葉、


 『初恋とは少しの愚かさと有り余る好奇心に過ぎない』


と、綴られていた。



恋の文字さえ知りえない年端もいかない年頃。


朧気(おぼれげ)ながらも特定の異性に抱いた好奇心。


自分ばかりを主張し、相手の気持ちを忖度することなど思いもよらず、


乱暴な振る舞い、とっぴな行動で自己を荒々しく言い立てた。


が、言動とは裏腹に胸の奥がなぜかチクンと痛んだ。



愛することの痛切さを体感し恋の哀歓を知る青臭い青年期。


自身を律せないもどかしさに思い乱(みだ)れ、そして苛立つ。


打算のない真摯な恋ゆえに思慕する人と暮らせない世の不条理に


理性が乱る。



愛別離苦を繰り返し、人生の道理を熟知したはずの壮年、


いや熟年さえも、


「俺、いや私もこの年になって初めて真実(ほんとう)の恋を知った」


などと宣う者さえいる。



人間それぞれ千差万別。


それぞれ異なった環境、境遇で育ち人生を歩む。


恋に定義などないように、


各々、恋の琴線(きょくせん)に触れたとき、


これが『初恋』と思い知る年齢は異なって自然。



初恋が成就した冥加(みょうが)なカップルも見受けるが、


多くの人は想いの丈を吐露できず恋に失速し悶々と苦悩する。


が、それも、いつの日か時が癒やしてくれる。



人生、苦楽を繰り返し、ふっと昔日を追想し郷愁に浸るとき、


他の記憶は何処かに置き忘れても『初恋』は、


心の奥襞からショイと目の前に取り出せる。


安楽が常に相対し、


長いようで短くもある人生に小さく彩られた恋


『初恋』


初恋のふたつの文字は心の中の宝箱。


見えないけれど蓋をめくると、いつもそこにある。
                                  

                          終


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