遠い記憶の底に沈んでいたポエム?エッセイ?童話?短編?……

ずいぶん前から書きためていた文(もの)です。取るに足らない書き物ばかりですが、パソコンを開いていたら100編ほどの文がありました。少しづつ整理して投稿していきたいと思っています。

不思議な現実・雑木林でネコが泣く(5)


               

         ページを開いてくれてありがとうございます
         今回も最終回になりませんでした
         次回は、最終稿にするつもりです
         時間を見計らってはポチポチ書いてはいるのですが
         なかなかはかどりませんが、なんとか無い知恵を絞り進めています
         よろしくお願いたします


         

     まだ目も開かない子ネコが親を求めてミヤ―ミャーと鳴いていました。


雑木林でネコが泣く(5)
私は手の中から子ネコが転げ落ちないように胸の中に抱きすくめました。
が、私が抱いたとたんでした。
子ネコの口がピタッと閉じられました。
生れ備わったネコの本能が、一瞬、危険を感知したのかもしれません。
手の中でおびえたように子ネコは体を小さく丸めました。
手足をすくめた子ネコの体が一回りも二回りも小さくなったようでした。
子ネコの泣き声が一瞬途絶えた雑木林に、優しい風がサーッと通り抜けま

した。
その風に葉がサラサラと揺れました。
そして、チーチーッと鳴く鳥の音が耳に染み入りました。
雑木林にポッンとひとり立つ私の耳に、その風の音(ね)や鳥のさえずり

が、どこかの葉陰で私を見つひそひそ話をする天使や妖精のささやきに聞
こえました。
足元でおだやかな木漏れ日がゆらゆらと揺れていました。
目の先で小さな日だまりがありました。
その日だまりの中で小枝の先の葉の影が、水面に浮かぶ木の葉のようにゆ

らゆらと揺らいでいました。

つかの間でしたが、私はひっそり閑々とした雰囲気に全身全霊が感応して
しまっていました。
雑木林の中、ひとりポッンと立っていることを忘れてしまいました。
子ネコが手の中にいることさえ置き忘れていました。
現在まで体験したことのない感情でした。どこか異次元の世界に迷い込ん

でしまった感覚でした。
しかし、その感触は嫌なものではありませんでした。
あえて言えば、まだ行ったことなどもちろんないのですが、見知らぬ世界、

別次元の世界にポツンと、ひとり迷い込んでしまったような感じでした。
私は以前にも、今回のようにポッンとひとり異次元の世界に迷い込んでし

まったような経験がありました。
その別次元の世界は、私が以前、心不全で緊急搬送された病院先でのこと

です。
搬送先で二週間ほど意識が不明だったと担当医師、看護師に告げられました。
その意識が失われていたときのことです。
意識が飛び、生死の間をさ迷っていた時のことです。現在でも夢だったの

か現実だったのか、はっきりと断言できませんが、私は生まれてこの方、
一度も行ったことのない世界中を歩き回っていました。

雪の深い山里を歩いたり、水平線まで青く澄んだ海辺に腰を下ろし、ただ
ジッと海を見つめていたこと、そして、なんと私は腕を左右に大きく伸ば
し大空を飛行していました。
眼下に訪ねたことも観たこともない世界中の風景が広がっていました。

眼下に広がる世界中の町
その間、私の記憶の中に風の音も鳥の羽ばたく音さえ感じたことはありま
せんでした。
音のない世界。
静寂に包まれた世界でした。
そんなバカな、とお思いになる方が多いとは思いますが、
うろ覚えながら記憶の底に焼き付いてしまっているようで、その不思議な

体験は今でも頭の奥の底から引き出せます。
その意識不明で夢の中をさ迷っている間、その世界で人間の姿は一人も見

ませんでした。
が、私は寂しい感情は少しもわきませんでした。
なぜなら、私の体全体が暖かい光に包まれているようで、とてもとても幸

せな気分に満たされていたことを今でも覚えています。
とても不思議な体験でした。
あとでその時の不思議な体験を思い出すと、もしかしたら私は向こう側の

世界に一歩足を踏み込んでいたのかもしれません。

(……あの時とおなじような感じだなー)
と、そんな思いにとらわれ、雑木林の中でぼんやりとたたずんでいたのも、

一呼吸する間のことでした。
手の中で体を丸め口をつぐんでいた子ネコがとつぜん『ミャーミャー』と、

見えない目で私を仰ぎ見、喉の奥から弱弱しい泣き声をたてました。
その声に私はハッと現実に引き戻されました。
手の中で子ネコが首をいっぱいに伸ばし、見えない目で私を仰いでいました。
その泣き声を聞き私はなんだかとても悲しく切なく成りました。
そして無性に腹立たしくなりました。
私には子ネコや犬をボロ雑巾のように放り投げる人の気持ちをまったく理

解できません。
先日もTVで報道されましたが、あるNPO動物愛護団体の理事長による
動物虐待のニュースを目にしました。
悲しくて見ているのがつらくなりました。
理事長が部屋の中にネコを閉じ込め、逃げ惑うネコをわしづかみにして棚

の上に放り投げている場面が映し出されていました。
そして、放り投げたネコの背を棒でたたいていました。
ネコは棚から逃げ出しました。
その猫を再び捕らえた理事長は、また棚の上に放り投げました。
そして再びネコを打ちました。

ネコは痛さに耐えきれなくなったのでしょう。棚の上で逃げまわっていま
したが、やがてぐったりと動かなくなりました。
そして、その猫は、自分の背を……棚板を背にして体を押し伸ばし、その

まま天井に手足を棒のように差し伸ばしていました。
そして、TVで見る限りで、はその猫はそのまま体を硬直させピクリとも

動く様子がありませんでした。
ネコが棚板に背を伸ばし四肢を棒のように固くして空に伸ばす姿を、いま

まで一度も見たことも聞いたこともありませんでした。
私はその画を目にして、とてもつらくなり悲しくなりました。
TV画面を凝視しながら胸の中がジーンッと熱いものがこみ上げました。
(よほど痛かったんだろうなー)
後日、その施設では何匹もの生き物が亡くなっていることが判明されまし

た。
幸い理事長は動物虐待の容疑で捕らえられたようです。

そのTV場面を頭のすみでチラチラっと思い出しながら、私は子ネコに目
を落としました。
(こんなかわいい子ネコをミカン箱に押し込めて……捨てるなんて……)
子ネコの泣き声はとどまることがありませんでした。
『ミャーミヤー』
と、泣く声は『おなかがすいたよーはやく、はやくごはんをたべさせてー』

と、全力で訴えていました。
私は手の上で泣くあどけない子ネコを見つめ、ふっと顔をほころばせました。
(かわいそうになーお腹がすいたか。ふっふ、もうすぐおまえに、おまえ

におなかいっぱい、いっぱいご飯を食べさせてやるからな。ふっふ、おま
えとここで巡り合ったのも、なにかの因縁かも……いや、前世からの宿命かもね)
私自身、まったく気づいていませんが、山の神様から『あんたは、いつも

オーバーな、ものの言い方をする。この世はみな前世からの因果が因縁で
結ばれている。なんてわけのわからないことをいうし。できもしないことも、
できる、できるなんて、なんでもかんでもすぐに安請けあいする。あんた
の悪い性癖よ!』なんて、ときどき小言をいわれています。
(それは……俺だってわかっているんだけどさー)
なんでもオーバーに放言する癖が子ネコを抱きしめ『これも前世からの宿命』なんて言葉が口をついて出てしまいました。
あまり強く抱きしめると子ネコの息が止まってしまうことも考えられるので、

優しく柔らかく胸に抱きました。
(絶対に……ぜったいに山の神様の許可をもらって、いや山の神様がいくら

手ごわく反対しても……俺が、俺が……子どもたちふたりと協力して山の
神様を納得させる。家で飼ってやるからな……)
と、ネコに向かって大見得を切ったものの、山の神様の顔が目の前にちら

つきました。
私は少しだけ、少しだけですが山の神さまの顔に腰が引けてしまいました。
決意が少し揺らぎました
が、自分を鼓舞させるように唇を固く結びひとりうなずきました。
『ミャーミャー』
子ネコが見えない目で私を仰ぎ弱弱しい声で泣きました。
「よしよし。もうすぐご飯を、ご飯をいっぱい食べさせてやるからな」
私は左の手のひらで子ネコを抱き、右手の人差し指を子ネコの口の前にそ

っと突き出しました。
子ネコは突き出した指先を母親の乳と思ったのか、小さくて細い四肢を私

の指先に絡めました。
その指先には絶対に指を離さない。と、子ネコの思いが込められていました。
そして、子ネコは小さな口先を私の指先にあてると『チュチュ』と、音を

立て吸いだしました。


                              つづく

何時も最終回最終回と言って、なかなか最終回にたどり着けません。
次回はなんとか頑張ってみます。
誤字脱字がありましたらご容赦くださるようにお願いたします。



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